みんしゃんの子育てBLOG

アラサーワーママの育児日記。タオル大好き長男サクちゃんとお風呂大好き次男モモくんとの生活を綴ります。

【映画感想文】アリスのままで(原題:Still Alice)

あらすじ

『アリスのままで』(原題:Still Alice)は、若年性アルツハイマーの女性アリスが記憶を失って行く日々を綴った全米ベストセラー小説『静かなるアリス』を映画化したもので、主人公であるアリスを演じたジュリアン・ムーアが第87回アカデミー賞主演女優賞を受賞したヒューマン・ドラマです。

 

50歳の誕生日を迎えたアリス(ジュリアン・ムーア)は、まさに人生の充実期を迎えていた。高明な言語学者として知られ、ニューヨークのコロンビア大学の教授として教鞭をとり、夫で医学博士のジョン(アレック・ボールドウィン)はアリスの誕生日に「僕の人生を通じて、最も美しく最も聡明な女性に」と愛のこもった乾杯の挨拶をする愛妻家、幸せな結婚をした長女アナ(ケイト・ボスワース)とその夫チャーリー(シェーン・マクレー)、医学院生の長男トム(ハンター・パリッシュ)も母親のお祝いに駆けつける。唯一の心配の種といえば、オーディションがあるから誕生日会にと顔を見せなかった、ロサンゼルスで女優を目指す次女のリディア(クリステン・スチュワート)だけ。

ところが、そんなアリスにまさかの運命が降りかかる。物忘れが頻繁に起こるようになって診察を受けた結果、若年性アルツハイマー病だと診断されたのだ。その日からアリスの避けられない運命との闘いが始まるー。

 映画『アリスのままで STILL ALICE』公式サイト http://alice-movie.com/about.html より抜粋

 

感想

本音でぶつかること

この映画の主な登場人物は、主人公アリスとその家族、夫のジョン、長女のアナとその夫チャーリー、長男のトム、そして次女のリディアです。インテリ一家の中で、リディアだけは女優を志し単身西海岸で劇団員として生活しており、異端な存在です。

 

しかし、次女のリディアは、いざこざをきっかけに長年反発していた母とはじめて向き合うようになりました。

 

 Lydia Howland: "What does it like? What does it actually feel like?

 (リディア:どんな感じ?どんな気持ちがする?)

 Dr. Alice Howland:

 "Well. It's not always the same. I have good days and bad days. My good days, I can, you know, spend almost pass like normal persons, but for my bad days, I feel like I can't find myself. 

 I've been always so defined by my (interact)、my language, my articuration and now sometimes I can see the words hanging infront of me and I can't reach them and I don't know who I am and I don't what I'm gonna lose next

 (アリス:

 いつも同じじゃないわ。いい日もあれば…悪い日もある。いい日はほとんど普通の人と同じように過ごせる。悪い日は自分が誰だかわからなくなる。

 私はつねに知性によって自己規定してきたわ。言語や明確な表現で。今は目の前にぶら下がっている言葉に 手が届かない感じ。次は何を失うのかしら。)

 

リディアが病気の母にこんなに直球で今の気持ちを尋ねられたのは、少なからず女優としての好奇心もあったと思います。

でも、一人で病気と闘うアリスにとっては、壊れ物に触るように扱われるよりも、こんなふうに本音でぶつかってきてくれる方が嬉しかったのではないでしょうか。

 

最愛の人だからこそ 

一方、夫のジョンは、夏の休暇で海辺の避暑地を訪れていた時、まだ体調が安定していたアリスに言います。

 Dr. John Howland: "I like you everything about you"

 (ジョン:君のすべてが好きだ。)

 

そんなジョンに、アリスは、来年ジョンが長期休暇をとって二人で一緒に過ごすことを提案します。

 Dr. Alice Howland:  You know what? It might be the last summer all by myself, you know?

 (アリス:分かってる?私が私でいられる最後の夏よ。)

 Dr. John Howland: Please don't say that.

 (ジョン:そんなこと言うな。)

 

ジョンは心からアリスを愛していたし、アリスと同じように彼もアリスとずっと一緒にいたいと思っていたでしょう。でも彼は、アルツハイマーという病気によって大切な人が刻一刻と記憶をなくしていくという現実を向き合えないでいました。自分の愛する妻がもうすぐいなくなってしまうという未来を受け入れたくなかったから、意識的に考えないようにしていたのかもしれません。アリスの提案はその場の思いつきのように聞こえたかもしれませんが、きっととても強い願いであったと私は思います。残念なことに、ジョンは妻の提案を受け入れず、休暇は取らずに仕事を続けることを選びました。

 

「瞬間を生きる」 

 若年性アルツハイマー病のために教壇に立てなくなったアリスですが、認知症介護の会議でスピーチをする機会を得ます。

3日がかりで書いた原稿を事前にテレビ電話でリディアに読んでみせたアリスは、リディアから「もっと個人的な話にしたら?みんなが知りたいのはママの気持ち。」と言われ、怒って電話を切ってしまいます。けれども、当日の原稿はリディアのアドバイスによって書き直したものでした。

 

Dr. Alice Howland: Good morning. It's an honor to be here. The poet Elizabeth Bishoponce wrote 'The Art of Losing isn't hard to master: so many things seem with the intent to be lost that their loss is no disaster.' I'm not a poet. I am a person living with Early Onset Arzheimer's, and as that person that I find myself learning the art of losing every day. Losing my bearing, losing objects, losing sleep, but mostly losing memories...

 All myb life I've accumulated memories - they've become,  in a way, my most precious possessions. The night I met my husband, the first time I held my text book in myb hands. Having children, making friends, travelling the world. Everything I accumulated in life, everything I've worked so hard for - now all that is ripped away. As you can imagine, or as you know, this is hell. But it gets worse.

 Who can take us seriously when we are so far from who we once were? Our strange behavior and fumbled sentences change other's perception of us and our perception of ourselves. We become redicurous, incapable, comic. But this is not who we are, this is our disease. And like other disease it has a cause, it has a progression, and it could have a cure. My greatest wish that my children, our children - the next generation - do not have to face what I am facing. But for the time being, I'm still alive. I know I'm alive. I have people I live dearly. I have things I want to do with my life. I rail against myself for not being able to remember things - but  I still have moments in the day of pure happiness and joy. And please do not think that I am suffering. I am not suffering. I am struggling. Struggling to be part of things, to stay connected to whom I was once. So, 'live in the moment' I tell myself. It's really all I can do, live in the moment. And not beat myself up too much... and not beat up myself too much for mastering the art of losing. One thing I will try to hold onto though is the memory of speaking here today. It will go, I know it will. It may be gone by tomorrow. But it means so much to be talking here, today, like my old ambitious self who was so fascinated by communication. Thank you for this opportunity. It means the world to me. Thank you.

 

 (アリス:おはようございます。本日はお招きいただいて光栄です。詩人エリザベス・ビショップは、“なくす技を覚えるのは簡単 多くの物が失われるのは災いではない”と書きました。私は詩人ではなく若年性アルツハイマー病です。そして“なくす技”を日々習得しています。方向感覚をなくし、物をなくし、眠りをなくし、そして記憶をなくしています。

 私の人生は記憶に満ちています。記憶は私の最も大切な宝になりました。夫と出会った夜、自分で書いた教科書を手にした日、子供が生まれ、友人ができ、世界を旅した。私が人生で蓄えた全てが、努力して得た全てが剥ぎ取られていくのです。想像するように、あるいはご存じのように、地獄です。もっと悪くなる。

 前と変わってしまった人間をどう扱うのか?おかしな行動と言葉のせいで、人の私たちを見る目が変わり、私たちも自分を見る目が変わる。奇妙で無能力で滑稽な存在になってしまう。でも、それは私たちではない。私たちの病気です。病気であるならば原因があり、進行もする。治療できるかもしれない。私の最大の願いは私の子供たちが、私たちの子供たちが私のような状況に陥らないこと。私はまだ生きています。生きているのです。心から愛する人がいて、やってみたい事がある。物を忘れてしまう自分に腹が立つけれど、喜びと幸福に満ちた瞬間が今もあるのです。私が苦しんでいると思わないでください。私は苦しんではいません。闘っているのです。世界の一部であろうとして、かつてそうだった自分であろうとして。だから私は瞬間を生きています。瞬間を生きること、それが私にできる全てなのです。自分を責めないで…“なくす技”が上達しても自分を責めないで。でも今日のこの記憶は持ち続けたい。失われるのは分かっています。それは明日かもしれない。でも今ここで話している事は大きな意味を持つのです。かつて私が言語学に情熱を燃やしたように。この機会をありがとう。かけがえのないものです。本当にありがとう。)

 

家族会議

やがてアリスのアルツハイマーの症状は急激に進み、今後についてジョンとアナとトムの3人が話し合うことになりますが、そこにリディアの姿はありませんでした。

念願叶い双子を出産したアナは仕事に復帰することを望み、トムは「僕はあのスピーチが忘れられない。」と言いますが医学院生のため母親の介護をできる状況ではありません。ジョンは、最先端医療を実施しているミネソタ州のメイヨー病院で自分のチームを率いて研究をすることが決まっており、最高の介護をすることを約束するからアリスを自分と一緒に連れていきたいと言います。

「ミネソタになれれば僕たちみんなが満足する。」

そう。ジョンの提案はジョン自身も、アナもトムも満足できるものです。しかし、アリスの気持ちは?「僕たちみんなが」は「アリスが」ではありません。

以前、アリスがまだ以前のアリスでいられた時、来春からメイヨー病院で研究をすると言ったジョンに言いました。「ここしか知らない」と。すべての記憶を失っていく彼女にとって、愛する家族との思い出が詰まった場所で過ごすということは、かつての自分であろうと闘うことそのものだったのではないでしょうか。

 

結局、話し合いに参加しなかったリディアに結論は委ねられることになり、リディアが西海岸の劇団をやめてアリスの面倒をみるために戻ってくることになりました。

 

父と娘の選択の違い 

戻ってきたリディアに、妻を残してメイヨー病院へ発つジョンが言った言葉、流した涙がとても心に刺さりました。

 

Mr. John Howland: You are a better man than I am.

(ジョン:君は僕よりいい人間だ。)

 

ジョンは妻であるアリスを愛していたし、彼女とずっと一緒にいたいと言っていたのも本心でしょう。でも、自分の仕事に対する夢や情熱が、彼女の住み慣れた家に留まりたいと言う願いを上回ってしまっただけなのです。

 

ジョンやアナ、トムは私自身です。仕事や出産や育児といった忙しさを理由に、私は施設に入った祖母に会いに行きませんでした。最終的に大事なのは自分で、できないことを正当化して、できるようにするための最大限の努力をしませんでした。

 

リディアは、最初はアリスの誕生日にも顔を出さず、アリスにとって物理的にも心理的にも最も遠い存在でした。しかし、最後にアリスの元に残ったのはリディアでした。リディアは、住み慣れた場所にとどまりかつての自分でありたいという母親の願いを、自分の劇団でのキャリアよりも優先しました。自分の娘が誰かもわからなくなってしまった母親のかつてのスピーチを信じて、彼女の意志を、尊厳を守ることを選んだのです。相手の気持ちを思いやるというのは、言葉で言うのは簡単ですが、いざ行動に移すとなるととても難しいことです。

 

終わりに 

私の祖母は、昨年93歳で亡くなりました。

今にして思えば、まだ赤ちゃんだった頃の長男に会いにきた祖母が、帰り際何度も何度もバッグの中にしまったお財布の場所を確認していたのは、アルツハイマーの症状だったのだな、とわかります。しかし、当時の私はこの病気に対する知識も理解も不足しており、祖母が私の知っている祖母でいられる時間が徐々に失われていくことを認識していませんでした。私はその頃、夫が単身赴任となってから次男の妊娠がわかり、悪阻で疲弊し(後に甲状腺が原因とわかりました)、長男を保育園に通わせながら自分も会社に通うのでいっぱいいっぱいだったのです。

祖母の面倒をみてくれたのは私の母です。祖母の息子である私の父はすでに亡くなっているので、母にとって祖母は血の繋がらない義理の母親であるにもかかわらずです。一人暮らしの自宅で転んで怪我をしてから歩けなくなった祖母に施設を探し、煩雑な書面手続きをし、持ち物を用意してそのすべてに名前をつけ、入居に付き添い、毎週お見舞いに通ってくれました。育児休暇に入り落ち着いたら私もお見舞いに行こうと思っていましたが、お見舞いに行く予定だった日の1週間前に祖母は静かに息を引き取りました。

 

価値ある人生 

アインシュタインの言葉に「他人のために尽くす人生こそ、価値ある人生だ」というものがあるそうです。

誰にとっても時間は有限です。私の母と、アリスの意思を尊重したリディアには、他者のために自分の時間を使い、自己犠牲の精神がありました。一方で、ジョン、アナ、トム、そして私は、自分の時間を自分のために使うことを優先し、他者のために使おうとしませんでした。

この映画によって、アルツハイマーという病気や、アリスがスピーチで語ったような病気と闘う当事者の気持ち、そしてその家族の葛藤を知ることができました。私たちは、つい未来のことばかりに気を取られ、今をないがしろにしてしまいます。でも、「瞬間を生きる」ことの積み重ねが、未来へとつながるのです。自分のことばかりではなく、他者のために、少しでも自分の時間を使えるように。この映画で得た理解が、私が今より少しでも「いい人間」になるための糧となりますように。

 

アリスのままで [DVD]

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https://www.imdb.com/title/tt3316960/