絵本の紹介
ビロードのうさぎ
原作:マージェリィ・W・ビアンコ
絵・抄訳:酒井駒子
出版社:ブロンズ新社
ISBNコード:9784893094087
あらすじ
クリスマスの贈り物としてぼうやのもとにやってきたビロードのうさぎ。
とても立派で素敵なうさぎでしたが、ぼうやが遊んだまま放っておいたのでおもちゃの棚や子ども部屋の隅っこで暮らすようになります。そこでは、値段の高いおもちゃや機械仕掛けのおもちゃが自分こそが本物であると自慢して、ただの布切れでできたビロードのうさぎを馬鹿にしました。うさぎは恥ずかしくていつも部屋の隅っこで小さくなっていました。
ある日、うさぎは唯一自分にやさしくしてくれるウマのおもちゃに尋ねます。
「みんなが いっている “ほんもの”って どういうこと?」
そして、心から大切に思われ、子どもの本当の友達になったおもちゃが本物になれるということを教えられます。
ある晩、いつもぼうやと一緒に寝るイヌのおもちゃが見つからず、お手伝いのナナがたまたま棚からうさぎをつかんでぼうやに渡しました。その日からぼうやは毎晩 うさぎと一緒に寝たり、一緒に遊んだりするようになりました。
ぼうやとうさぎはいつも一緒で、年月とともに汚れてボロボロになっても、ぼうやに大事にされたうさぎはしあわせでした。子ども部屋の魔法で、自分は本物のうさぎになったと信じていたのです。
でも、別れは突然やってきたのです・・・。
感想
2歳の息子は遊んだら遊びっぱなしで次から次に新しいおもちゃを出し、おもちゃの片付けがなかなかできません。
そんな息子に私はイライラして、
「お片づけしていないおもちゃは捨てちゃうからね!」
とよく言ってしまいます。
床に落ちているおもちゃを捨てるために私が集め始めると、息子も一緒になっておもちゃを拾い始めます。そして、拾ったおもちゃを「はい、どーぞ」と私に渡してくるので、息子は私が言っている「捨てる」という言葉の意味がよくわかっていないようです。そんな子相手に本気で怒ったところで相手が理解していないのだから意味がないことは頭では理解できるのですが、それでも毎日毎日同じ会話を繰り広げてしまいます。。
おもちゃの立場になってみると私のような大人の態度はあまりに酷いですね。子どもにおもちゃを買い与えたのは自分なのに、自分の都合で簡単にそれを「捨てる」と言ってしまうのですから。
なるべくこのような発言は控えるとともに、息子が自分のおもちゃに対して、ぼうやがビロードのうさぎに対して注いだような愛情を持ち、大事に扱ってくれる日が早く来ることを心から祈るばかりです。
最後に
ぼうやがビロードでできたおもちゃのうさぎを心から大切に思い可愛がることで、うさぎはぼうやにとっての「ほんとうの うさぎ」になりました。そして、非情にもぼうやとお別れすることになったうさぎが心から流した本当の涙が子ども部屋の妖精を呼び、うさぎを本当のものにしてくれます。
この絵本のエンディングでは、季節はめぐり、ある時ぼうやが森でこちらの方をじっと見ている不思議な野うさぎと出会ったことが描かれています。そして、病気の時になくしてしまった彼の大切なビロードのうさぎのことを思い出したぼうやの言葉で終わります。
ビロードのうさぎの視点を通して、大人の都合に振り回されながらも子どもたちに愛されたいと願うおもちゃたちの存在や、一緒にいられるだけでしあわせで互いに心満たされる子どもとおもちゃの関係に気付かされます。多くの大人にとって、いつの間にか忘れてしまったことではないでしょうか。
また、たとえおもちゃとお別れをしなければならなかったとしても、自分にとって本当に大切なおもちゃと遊んだ思い出は時が経っても消えることはなく、おもちゃは子どもの心の中で生き続けるのだと、伝えてくれているように思います。
“ほんもの”とは、“永遠”なのであると。

- 作者: マージェリィ・W.ビアンコ,酒井駒子
- 出版社/メーカー: ブロンズ新社
- 発売日: 2007/04/01
- メディア: ハードカバー
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